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１１話 規格外の力と、最古のドラゴンの王
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2025-09-26 11:00:24♢予期せぬ契約とドラゴンの王
「それと、お願いがあって参りました。絶対服従の証として、我を使役して頂きたく参りました」
その言葉に、少女たちは一斉に心の中で叫んだ。
（ペットちゃうやん！！ ドラゴンをペットってあり得ないし！！ 最強種だし！！）
そらは困惑しながら考える。
（使役って何？ 服従させるってこと？ ペットって言っちゃったし、服従は必要かな？ 人を襲っちゃったら大変だしな……）
彼の脳裏には、ドラゴンの暴走によって街が破壊されるような最悪のシナリオが浮かんだ。そうなる前に、何らかの形で制御する必要がある。
「分かったよ。で、どうすれば良いの？」
ドラゴンは堂々と答える。その声は、洞窟で聞いた時よりも、どこか誇らしげに響いた。
「契約魔法のサモンと唱えてくだされば」
その瞬間、ブロッサムが焦ったように心の中で警告する。彼女は、この世界の常識を誰よりも理解している少女だった。
（使役って、ドラゴンより強くなければ使役できないし、魔力量も相当消費するわよ。普通は、人間ではムリですわ……魔力量が足りずに死んでしまう……止めるべきだよね……）
しかし、そらは迷うことなく魔法を詠唱した。彼の頭の中には、「なんだか面倒なことになっちゃったな……とっとと終わらせて帰ってもらおう……」と目の前のドラゴンを面倒だと思っていた。
「契約サモン！」
──ドラゴンの足元に、淡い紫色の魔方陣が浮かび上がる。神秘的な光が、辺りを照らした。その輝きは、周囲の木々を幻のように浮かび上がらせる。
その光景を見たブロッサムが叫んだ。その声は、絶望に満ちていた。
「止めて！ 魔力量が足りずに死んでしまうわよ！」
そらは驚きながら返す。
「えっ！？ 遅くない？ もう詠唱をしちゃったんだけど……」
魔力が少し吸われる感覚があったが、特に問題はなさそうだった。彼の体からは、無限とも思える魔力が湧き出ていて問題なかった。
「ん……えっと、大丈夫みたい……だよ」
少女たちは一斉に心の中で叫んだ。その顔には、驚きと、信じられないという感情が複雑に絡み合っていた。
（はぁ～！？ あり得ないんですけど……）
使役の契約が終わり、安心したのか──
ドラゴンがゆっくりと少女たちを見つめる。その赤い目に黒色の瞳には、好奇心と、かすかな威圧感が混じっていた。
「我は、竜の谷の最古のドラゴンの王である。貴様たちは、我が主の何なのだ？」
その言葉に、少女たちの顔は、まるで凍りついたかのように強張る。
（竜の谷のドラゴンって、ドラゴンの中でも最強だって伝えられてるドラゴン……？ 王だし、しかも最古って……）
ブロッサムの脳裏には、幼い頃に読み聞かせてもらった伝説の物語が蘇っていた。その物語に出てくるのは、人類が滅び地上が壊滅するほどの災厄をもたらす、畏怖すべき存在だった。
──ドラゴンは不死の存在。
最古のドラゴンは、狩りを続けることで経験値を稼ぎ、成長を続ける。縄張り争いをすれば魔物や猛獣を巻き込んで戦い、さらに膨大な経験値を得る。それを何数千年、何数万年と繰り返せば──最強に至るのは当然だった。彼らの間では、その存在はただの生物ではなく、世界を形作る自然の摂理そのものだとすら言われていた。
そらは、少女たちの混乱を察し、咄嗟にドラゴンへ釘を刺す。
「ちょっと！ ボクの客人だよ。失礼のないようにね！」
ドラゴンは少し驚いた様子を見せると、ゆっくりと頷いた。彼の巨大な頭が、わずかに傾げられる。
「それは……失礼致しました。では、我は昼食を獲って参ります」
そう言うと、さらに衝撃の言葉を続けた。
「何かあればサモンでお呼び出しください」
そらは即座にツッコむ。
「いやいや……牛は朝食で食べきれないから！ 一週間以上はかかると思うよ！」
ドラゴンは少し考え込むと、ゆっくりと告げる。
「では、お近くにて待機しております」
「なるべく目立たないようにね！」
少女たちは、まだ混乱したまま沈黙している。目の前の現実が、あまりにも非常識すぎて、言葉を失っているようだった。
「……じゃ、遅くなったけど朝食にしようか」
少女たちは顔を見合わせ、少し間を置いて返す。
「……う、うん」
朝食中──ブロッサムが、じっとそらを見つめながら尋ねた。その瞳には、未だ解けない謎が宿っている。
「で、どうやってドラゴンを服従させたのよ？」
そらはスプーンを動かしながら、軽く答える。
「急に襲い掛かってきたから……しつけで、ちょっと……ペチン！って……」
ブロッサムの表情が強張る。その言葉の裏に隠された意味を、彼女は必死で探ろうとしていた。
「しつけって……何をしたのよ！？」
「……ウサギを狩った時に使った魔法で、ちょっとね」
エルは驚きとともに、キラキラした目で言った。その無垢な瞳は、ただ純粋な「すごいこと」として、そらの言葉を受け止めていた。
「わぁ……スゴイいねっ！ かっこいー！」
ステフは何か言いたそうだが、沈黙。その驚きを消化しきれていないようだった。彼女の口は半開きになり、瞳は虚ろなままだった。
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